17:創作(未完成) [2019年12月18日 1:00:02] ID:7bb2b871
一話 終わり
16:創作(未完成) [2019年12月18日 0:48:43] ID:7bb2b871
ユイのやつ、二人の秘密にしようだなんて、照れくせーな。
今は科学の授業中。先生の話を聞き流しながら、朝にユイが言っていた言葉を頭でループさせる。
これからのことを考えると、ワクワクしてくる。
どんな活動にしよう。拠点は?あの空き教室か。二人のコンビ名とかも決めちゃう?そもそも人助けってどんなことしたら良いんだ?それはユイが考えてくんねーかな。
手に握ったスマホには、さっきIDを教えてもらったユイとのトーク画面が表示されている。なんかテンションが上がってきて、「これからよろしく」と打ち込んで、送信した。満足だ。
「久我ァ!」
「うわ!」
いつのまにか先生がオレの横まで来ていて、スマホの画面を除きこんできた。モラル欠けてね?
「授業中にスマホをいじるな!これは放課後まで没収だ!」
「ええ勘弁してくださいっすよ!つかオマエらもなんで教えてくんねーんだよ!?」
いや声かけてたわ!と突っ込まれると、教室に笑いが起きる。全然気づかなかった。そんな考えこんでたのか。マジかオレ。
怒られたけど、なんか、面白い。
15:創作(未完成) [2019年12月18日 0:20:08] ID:7bb2b871
「じゃあさ!逆にこれで人助けするとかどうだ!?」
彼はそう言ってみせた。目が輝いている。
「良いんじゃないかな……!」
人助け。良い響きだ。
かつての私のような人も、救えるだろうか。ならば。
「もちろん、ユイも一緒にやるんだぜ!」
心を読まれたかと思った。彼の手を見てみるも、指輪は握っているようで、着けていないみたいだ。まぐれか。それとも、以心伝心というやつか。いやいや、出会って1日で何を。
でも、こんな彼となら、大丈夫だ。
「うん、よろしくね」
彼の目を見て、少しでも気持ちが伝わるように言葉にする。彼は歯を見せて笑った。
「あ、……あと一つだけ」
連絡先も交換して、彼がじゃあまたな、と言ったとき、もう一つ言っておきたいことがあったのを思い出した。
「何だ?」
「この指輪のことは、二人だけの秘密にしてほしい」
彼ならきっとあの指輪を悪用したりしない。でも、彼の周りがどうかはわからない。
「おう!りょーかい」
彼はニヤッとしてそう言った。変な受け取り方をしていないだろうか。
とにかく、これからが楽しみだ。
14:創作(未完成) [2019年12月17日 23:56:29] ID:70159980
「この指輪、やっぱりヨシキ君が持っててくれないかな」
「持っててって……もしかしてユイ、オレよりモノなくしやすいのか!?」
おそらくそんなことはないのだが、彼に説明するのが難しいので頷いておく。なら仕方ねえな、と自慢げな彼が手をすっと差し出したので、私はその上に指輪を置いた。
「しっかしこれから何に使おうかな~、これ」
手にした指輪を覗きながら、彼が呟く。使い道は私も特に考えていなかった。
「あ!これイタズラに使えそうじゃね?」
イタズラ、という言葉に昨日考えたことが連想された。
「それはダメ!」
心の内と外の境界線を無くすことは、一歩間違えたら誰かが辛い思いをする。それをイタズラなどと、生半可な気持ちでやるなんて。
見ると、彼は驚いた様子だった。
「わりぃ……、ごめん。冗談だ、冗談」
申し訳なさそうに言う彼。きっと理解はできていないのだろうが、それでも謝るところを見るとやはり良い人なのだと思う。さっきの発言も、悪意はなかったはず。
「うん……そうだよね、こっちこそ急に大声あげちゃってごめん」
彼に、私も詫びを入れる。一方その彼は何かを考える素振りをした後、突然声をあげた。
13:創作(未完成) [2019年12月17日 23:30:16] ID:70159980
翌日朝。私はその教室の扉の前で立ち尽くしていた。
今日は電車で会わなかったので、彼の教室まで(と言っても隣だが)来てみたのだが。声は聞こえるのでいることはわかった。しかし声が通らず、呼びかけがあちらまで届かない。
そんなとき、運よく彼がこちらを見て、私に気づいたようだった。私が小さく手招きしてみせると、彼はグループの人に断って、廊下まで出て来てくれた。
そこまでは良かったものの、十分賑やかな朝の廊下、私の声ではその場所で会話が成立しないため、結局昨日の空き教室に入った。
「ごめん、こんなところまで」
「良いって良いって!それよりどうしたんだ?ユイ」
名前を覚えてくれていることに嬉しさを感じる。私はポケットから例の指輪を取り出して、話を切り出した。
「この指輪について……なんだけど」
12:創作(未完成) [2019年12月17日 23:01:54] ID:70159980
力なくベッドに倒れる。制服にしわがつくだろうか。しかし疲れていてどうにも着替える気が起きない。私は仰向けになって、今日のことを思い起こした。
色々なことがあった。ナルシストがバレたと思って、悩んで、帰ろうとしたら突然声かけられて、いきなり謝られて……。挙げてみたらきりがない。寝返りをうって、思い出したのは彼のあの言葉。
そういうのって、相手を傷つけたりする?
やっぱり、わからない。わかりたくないのかもしれない。あの人達の気持ちなんて知るわけがない。
私自身は、ナルシストが誰かを傷つけるなんて思っていない。だから、いじめられてもこの容姿への自信を無くそうとは考えなかった。事実可愛い。自分の感性で可愛いと思ったものを素直に言葉にして何が悪い。
じゃあ私がいじめられていたのはなんで?やはり私は彼女たちに、無自覚に酷いことをしていたのか?
考えることが嫌になってきて、また寝返りをうったとき、制服のポケットから何か出てきた。指輪だ。人の心が読める指輪。手持ちぶさたで、指にはめようとしてみる。
これがあったら、彼女らの思惑もわかったのか。
そう考えた瞬間に寒気がして、手を滑らして指輪が飛んでいった。焦ったが、ベットのすぐ横に落ちているのが見えて一先ず心を落ち着ける。
言わない方が良いことがある。彼には伝わらなかったが、私はそう思う。
そして、それはつまり人に知られると不味いことだ。心の声を読むということは、それも知ることになる。
私には、ムリだ。
明日彼に渡すことにしようと考えながら、疲れきった私は眠りに落ちた。
11:創作(未完成) [2019年12月17日 14:25:53] ID:70159980
俺と一緒だな。
そういうのって、相手を傷つけたりする?
……意味深なこと言うものだ。
「あ!ここにいんじゃねぇかKY!探したんだからなー」
急にドアが空いたかと思えば、目の前の人に負けず劣らずの大声。彼の友達のようだが、それにしてもKYとは。
「オイいきなりKYはないだろ!?」
「ばーか、これから超楽しいことするっていう肝心なときにいねーやつがいるかよ」
「えっちょマジ!?すぐ行くわ!」
「んじゃ走んぞ!」
「おう!」
怒濤の勢いで話が終わり、彼は私に「じゃあな!」と言って部屋から走りさった。
KY。それは彼のあだ名なのだろうと思った。先程のムードを無視した行動などを鑑みて。そういえば朝もそのようなことを言っていたような。
結局、先程の質問はただ単に彼が知りたかったことなのかもしれない。きっと人の気持ちがよく分からないのであろう彼が。
確かに私も同じか?
……彼に同じと言われたとき、少し嬉しかった気がする。
自然に口角が上がっていることに、自分が映った窓を見て気づく。なんだか照れ臭くなって、自分も部屋を後にした。
10:創作(未完成) [2019年12月17日 14:00:39] ID:70159980
「……そのことを、良く思わない人も、いる……から」
「そうか!?オレは面白いと思ったけどなー」
私の説明に、納得いっていないようだ。でも、ダメなものはダメなのだ。埒があかないから、教えてあげよう。
「……世の中には、言わない方が良いことがあるんだよ」
皆がおかしいと思うこととか。
私の言葉に、相手はふーんと返す。私がその返答の真意を分かりかねていたところで、彼が「あ!」と声をあげた。
「そういうのって、相手を傷つけたりする?」
突拍子もない質問で、戸惑う。相手を傷つけるか?ナルシストであることが?私は黙りこんでいたが、沈黙と、目の前の何を考えているかもわからない真っ直ぐな瞳に、だんだんいたたまれなくなる。
「わからない」
「そうか」
彼はそう返して微笑み、また口を開いた。
「じゃあ、俺と一緒だな!」
そう言った彼の表情は嬉しそうだった。
9:創作(未完成) [2019年12月16日 22:44:12] ID:5e1e31c3
「こんなに面白いヤツが隣のクラスにいるなんてしらなかったぜ、オレはヨシキ、久我ヨシキ。オマエは?」
「私は……菊池、ユイです。」
「ユイか、タメで良いぜ!よろしくな」
名前を教えたってことは、これからも仲良くしてくれるということなのだろうか。そう考えるだけで、心が暖かくなる。
彼はいそいそと指輪を外して、机においた。
「じゃあ、オレはそろそろダチんところにいかなきゃだわ。これはお前が持っててくれ!俺だとなくしそうだから」
理解に容易い。私は頷いて、その指輪を手に取り、ポケットに入れた。
「ユイは友達のところに行かなくて良いのか?」
そう言われて、私は返答に困った。
友達はいない。いじめ以降、私は人と関わるのが怖くなった。事件直後なんかは優しい子に声をかけられても一言も返せなくて、それを重ねるうちに、どんどん私の周りから人がいなくなった。
お母さんにそれではダメだと言われて、もうこうしてやり取りはできるようになったのだけれど、声は小さいし、他人とは関わらないようにしている。
「友達、いないから……」
素直に答えてみたら、相手は驚いた顔をしてみせた。
「え、マジ!?もったいね~。あ、ナルシストの面をもっとオープンにしたら、ユイの面白さが皆に伝わって、友達めちゃくちゃできるんじゃね!?」
「それはない、と……思うよ」
また反射で本音が漏れる。最後に笑いをつけて誤魔化したつもりだが、やっぱり相手は不思議そうな顔をしていた。
「なんで?」
8:創作(未完成) [2019年12月16日 22:08:25] ID:5e1e31c3
ナルシストなんて受け入れられるわけがない。嘲笑か、軽蔑か。せっかく、仲良くなれそうだったのに。私は、だから、だから。
「ぷっ、ふはははははは!」
急に吹き出したかと思えば、豪快に笑い出された。これは多分、嘲笑ではないだろうが、予想外のことで、理解が追い付かない。
「今のってお前の心の声!?あっそーだそーだ朝のもそんな中身だったー!ふはっ、オマエっておもしれ~」
一人で盛り上がっていて、呆気にとられる。面白いのだろうか。気持ち悪いとか言わないのだろうか。
「そうか~ナルシだったんだなオマエ。あっでも確かに」
そういって彼が顔を近づけてきた。
「よく見たらかわいーな!」
「よよよよく見たら!?よく見なくてもかわ、いい……し」
条件反射で言い返す。しまった。これは引かれただろうか、なんて心配する隙も与えず彼はまた笑い出した。自分でも馬鹿馬鹿しくなってきて、一緒になって笑った。
7:創作(未完成) [2019年12月16日 20:15:29] ID:5e1e31c3
「まさかこんなんで人の心が読めるなんてなー!」
「すごいですよね……!」
彼も私も目を輝かせていた。こういうファンタジーは大好きだ。彼もそうみたいで、何分かお互いに興奮を語り合った。彼ともだんだん打ち解けてきて、私は“心配ごと”があったのも忘れていた。
「なんか、忘れてる気がする……」
ふと、なんとなく思い出して、言葉がこぼれる。それに対して、彼は「じゃあオレがこの指輪で探ってやろう!」なんてノり気だ。
本人が忘れていたら意味がないのではと思いながら、思考を巡らせるため窓の方に視線を向けた。窓に私が映る。やっぱり、私は……。
「私は、可愛い」
そのときに、やっと思い出した。心配ごと。最初に聞こうとしたこと。
“ーー私がナルシストだってこと、どう思いましたか”
6:創作(未完成) [2019年12月16日 19:47:58] ID:5e1e31c3
そう言って、ポケットに手を突っ込んだ彼が取り出したのは指輪だった。
「そうだ!これはめた瞬間になんか聞こえてきて、それを呟いたらキミが振り向いて……!」
つまり、あの指輪をはめた途端に、私の心の声が聞こえたということだろうか。にわかには信じられないけれど、確認する価値はある。
「それ、貸してもらっても良いかな?」
「お、おう!」
差し出した手に置かれた指輪を、そっと自分の指にはめた。その瞬間、脳内にふっとなにか言葉が入ってきた。
やばいよなこれ、マジだったら……。
直感的に、私の言葉ではないと思った。目の前にはまじまじと指輪を見つめる彼。そして。
「やばいよなこれ、マジだったら……」
もう疑いの余地もない。この指輪で、人の心が読める。
5:創作(未完成) [2019年12月16日 19:23:09] ID:5e1e31c3
「ごめん!」
あまりに真剣な顔をしていたので頷いてしまい、何も言わず彼についていって、入った空き教室。私がドアを閉めた瞬間、開口一番にそう言われた。相手は深く頭を下げているが、上手く状況がつかめない。
「なんのことか分からない、です」
この場所だと、私の虫の声も相手に届くようで、彼は顔を上げて話し始めた。
「朝、キミに会ったとき、なんか傷つけちゃったみたいだったから、謝りに来たんだ。ごめん!」
そう言って彼はまた頭を下げた。
この人だったんだ。わかった瞬間に、なぜだか少しホッとした。でも。
とりあえず頭は上げてもらう。少し沈黙が続いた。相手は私の反応をうかがっている。私は、適当な返答は思いつかないけど、一つ、とても聞きたいことがある。でも、それを言葉にするのは怖かった。
そもそも、まだ不可解な点があった。そのことについても教えてもらいたい。
「あの……なんで、私の考えてたこと分かったんですか、朝。」
「考えてたこと?……え!?」
すっとんきょうな声をあげて、すぐに黙る彼。なにかを思い出してるようだ。その姿が妙にアホっぽくて、ちょっと笑える。ワンテンポ置いて、彼が声をあげた。
「もしかして!これか!?」
4:創作(未完成) [2019年12月16日 18:24:55] ID:5e1e31c3
最悪だ。ずっと隠してたのに。声に出ていたのか。でも、簡単に聞こえるような声じゃない。なんで。
朝からずっと、あの出来事が頭から離れない。不可解だったし、それ以上にショックだった。
ナルシスト。私の、自分の容姿への自信はそれに当てはまる。物心ついたときから自分の顔が好きで、暇さえあれば鏡ばかり見ていた。
昔、それが原因でいじめられたことがある。それからはずっと、その思いを隠していた。ナルシストなのはそのままだし、今も気づいたらガラスを見つめていたりするけれど、あからさまな行動は避けていた。
なのにあんなことがあった。広まりさえしなければ良い。でも、昔のことを考えると。
相手の顔も覚えていない。男の子だったはず。心配で、もう授業なんか頭に入ってこなかった。
放課後を迎えた。もう考える気力もない。とりあえず早く家に帰ろう。そう思って教室を出たところで、誰かに声をかけられた。
「あの!」
廊下に響きわたる。大きな声……微かに聞き覚えがあった。
「少し、話……良いか?」
朝、同じ電車に乗っていた子だ。
3:創作(未完成) [2019年12月16日 17:43:54] ID:5e1e31c3
学校に一緒に行ってるヤツらとだと、オレだけ違うフロアだ。だからこの廊下はいつも一人で歩く。寒い。
ポケットに手を突っ込むと、何かが手に当たったのでそれを取り出してみた。指輪だ。さっき拾って、なんとなくポケットに入れたのを忘れてた。これって泥棒かな、とかちょっと思った。
オレは、その指輪をはめた。なんとなくだった。そしたら急になにか聞こえてきた。
「ああ、私って可愛い……?」
つい反復したのは、オレのクセ。でも、その言葉で急に前の子が振り返った。
「なんで……?」
オレでも分かってしまうくらい、悲しそうな顔をしていた。返事をする間もなくその子は走りだして、オレのクラスの隣の教室に入った。
「えっと、またオレ、なんかやっちゃったのかな……」
もう何がなんだか分からなかった。ただ、申し訳なかった。指輪はすぐに外してポケットに入れた。
放課後、あの子に謝りに行こう。
2:創作(未完成) [2019年12月16日 17:16:18] ID:5e1e31c3
自分の学年のフロアへ、階段を登っていく。私が通う○○高校は校舎が無駄に広く、玄関から教室までも遠い。感じるのは寒さ。やはり朝は冷える。
踊り場には鏡があって、いつもクセで覗く。
やっぱり、可愛い。
数秒間鏡の前で止まっていたが、ふと正気に戻って歩き出した。駄目だってば、こんなことしてたら、気づかれてしまう。なんだか焦って、階段をかけ上がった。
少し息切れしながら教室へ向かう。当然その道のりも長い。いつものように、スマホをポケットから取り出した。
でも黒い画面のままにしておく。自分の顔がそこに映って、見れるのだ。万が一人が寄ってきたら電源をつければ、このことはバレない。まあそんな人いないけれど。
ああ、私って可愛い。
「ああ、私って可愛い……?」
後ろから、私の思いを復唱する声が聞こえる。
……え?
1:プロローグ [2019年12月16日 16:44:23] ID:5e1e31c3
私は可愛い。
登校中の電車で、ドアの窓に映る自分を見て思う。ボーっと見つめていると、同じ制服を着た男の子たちの会話が聞こえてきた。
「さっすがKY~」
「いや今のは空気読めてたくね!?」
大きい声。別に注意もしないけれど。
私は可愛い。
信号待ち、横のショーウィンドウに映る自分を見てまた思う。そんなとき、さっきの子たちの声が後ろから聞こえた。
「いや~さっきのヨシキのはケッサクだったな」
「ほんとだよ、やっぱおもしれー」
楽しそうなやりとりが耳に入る。
……正直、一緒に学校に行く友達がいるというのは羨ましい。
信号が青に変わった。まわりが一斉に動いて、私も歩き出した。
*
一瞬、わきの草むらで何かが光った気がしたんだ。集団からちょっと離れて、その辺りまで行って、見回してたらそれっぽいのを見つけた。
「ンだこれ。……指輪?」
「おーいヨシキ!何してんだよ」
「おいてくぞー」
「あ、おう今行く!ちょ置いてくなって!!」
笑い声が響いた。
ーきっかけは、それ。